【講演会レポート】カラヴァッジョの《キリストの埋葬》に見られる古典性と革新性@サクラファミリア

7/232025
(水)

【講演会レポート】カラヴァッジョの《キリストの埋葬》に見られる古典性と革新性@サクラファミリア

現在、大阪・関西万博のイタリア館に設けられたバチカンパビリオンでは、バロック期イタリア絵画の巨匠・カラヴァッジョによる《キリストの埋葬》が特別に展示されています。
その名画に焦点を当てた講演会が、7月20日、梅田のサクラファミリアで開催されました。
本講演は、5月に大阪高松カテドラルで行われた内容とほぼ同じものですが、好評を受けて改めて開催されたものです。

講演会情報

タイトル:「カラヴァッジョの《キリストの埋葬》に見られる古典性と革新性」
日時:2025年7月20日(日) 午後5:00~
会場:サクラ ファミリア
講師:木村 太郎 氏(大阪芸術大学/神戸女学院大学 非常勤講師)
   →木村先生のInstagram

講演会の内容

冒頭では、前田万葉枢機卿様と、聖年万博委員会委員長のヌノ神父様より、それぞれご挨拶がありました。

枢機卿様は、5月の初回講演を自ら企画されたにもかかわらず、ローマでのコンクラーベのため参加できなかったことへの残念な思いと、自らもぜひ聴講したいとの希望から今回改めてこの場を設けたことを語られ、会場の雰囲気を和ませてくださいました。
続いてヌノ神父様からも歓迎のメッセージが贈られ、和やかなうちに講演会はスタートしました。

講師は前回に続き、木村太郎先生。
《キリストの埋葬》を「古典性」と「革新性」という二つの視点から読み解くテーマで講演が進められました。

前半は、カラヴァッジョの生涯と本作の背景、制作経緯が丁寧に解説されました。ローマの礼拝堂のために描かれたこと、現在はバチカン美術館に所蔵されていることなど、作品が置かれた歴史的背景に触れることで、本作の重みがより身近に感じられる時間となりました。

後半では、画面構成や人物の動き、表情を詳しく分析しつつ、「古典性」と「革新性」という一見対立する要素がどのようにこの作品の中で調和しているかが語られました。
写実性と静謐さ、力強さが共存するこの作品が、時代を越えて心を打つ理由が少しずつ解き明かされていきます。

質疑応答の時間も前回以上に活発で、参加者の関心の高さがうかがえるひとときでした。
木村先生はどの質問にも誠実かつわかりやすく答えてくださり、美術史に馴染みのない方でも理解しやすい講演となっていたように思います。

万博も後半戦に入り、多くの方が《キリストの埋葬》を実際に目にされたことでしょう。
すでに鑑賞された方も、これから訪れる方も、この講演を通じてイタリア絵画への関心をさらに深める機会となったのではないでしょうか。
名画が語りかけてくる静かな力を改めて感じさせられる講演会となりました。