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【講演会レポート】カラヴァッジョの《キリストの埋葬》に見られる古典性と革新性
現在開催中の大阪・関西万博。
そのイタリア館に設けられたバチカンパビリオンでは、バロック期イタリア絵画の巨匠、カラヴァッジョによる《キリストの埋葬》が特別に貸し出され、静かな話題を呼んでいます。
この名画に焦点を当てた講演会が、5月10日、大阪高松カテドラル聖マリア大聖堂にて行われました。
その様子を皆さまにもお届けいたします。
講演会情報
タイトル | 「カラヴァッジョの《キリストの埋葬》に見られる古典性と革新性」 |
日時 | 2025年5月10日(土) 午後14:00~ |
会場 | 大阪高松カテドラル聖マリア大聖堂/小聖堂 |
講師 | 木村 太郎 氏(大阪芸術大学/神戸女学院大学 非常勤講師) →木村先生のInstagram |
講演会の内容
今回の講演では、《キリストの埋葬》を「古典性」と「革新性」の二つの視点から捉える試みがなされました。
限られた時間の中で、この作品の奥行きを豊かに示してくださった内容でした。
講演の前半は、カラヴァッジョの生涯やその作品が置かれた歴史的背景に触れつつ、本作の制作経緯についても丁寧に解説がなされました。
この絵画がローマのサンタ・マリア・イン・ヴァッリチェッラ教会のヴィットリーチェ家礼拝堂のために描かれ、現在はバチカン美術館に所蔵されていることも紹介されました。
後半では、画面構成や登場人物の表情・動きに注目しながら、聖書の記述とも照らし合わせつつ「古典性」と「革新性」の両面からの分析が展開されました。
写実的でありながら、どこか静謐な情感を湛えたこの作品が、いかに時代を超えて人々の心をとらえてきたのか――そうした問いが、静かに提示されていたように思います。
2時間にわたる濃密な講演のあとは熱の入った質疑応答も行われました。
美術史や宗教画にあまり詳しくない方でも、作品と向き合う新たな視点を得られるひとときだったのではないでしょうか。
実際に展示されている《キリストの埋葬》を、あらためてこの目で見たい。
そんな思いを胸に、会場を後にする参加者の姿も多く見られました。
芸術作品が時代や国境を越えて語りかけてくるものの大きさを、改めて感じさせられるひとときでした。